第1 解雇
1.解雇と言われたら
■上司からの通告
「明日から会社に来なくていい」、「今月で辞めてほしい」などと言われたら、だれでも驚きます。このまま仕事を続けたいと思っても、「辞めたくありません」、とはなかなか言えません。そのうちに、「解雇する」と言われてしまうかもしれません。
■解雇と言われたら
「解雇する」とは、労働契約を解約するということです。それ以後、その会社では仕事はできません。賃金ももらえません。健康保険も打ち切られます。
解雇を受け入れるということもありえます。しかし、納得できないときはどうしたらよいでしょうか。
■自分で交渉する
解雇するといわれても、納得できないのであれば、すぐに承諾してはいけません。「考えさせてください」といって、後刻あるいは後日、あなた自身が、このまま働きたいと言って、解雇を撤回してもらうという方法もあるでしょう。
■労働組合を通じて交渉する
自分で交渉してもむずかしい、あるいは自分で交渉することができないときは、労働組合に相談し、労働組合を通じて、交渉することもできます。
自分が勤めている会社に労働組合がないときは、だれでも加入できる労働組合に相談するのもよいでしょう。
■弁護士に相談する
自分で交渉しても、労働組合を通じて交渉しても、なかなかうまくいかないとき、弁護士に相談してみてください。
解雇と言われてどうしたらよいかまったく分からないときも、弁護士に相談してみてください。
弁護士は、どうしたらよいか法的なアドバイスをします。また、必要であれば裁判で解決します。
2.解雇に関する相談
■解雇の理由はなにか
弁護士に相談すると、次のことを聞かれます。
①勤務先の住所・会社名
②あなたの入社年月日・所属部署・担当業務
③いつ、だれから、どのようにして「解雇」と言われたか
④会社は解雇の理由を説明したか。
⑤会社は解雇の理由として、どのような説明をしたか。
⑥あなたは、解雇の理由のどの部分が納得できないか。
■法律に違反する解雇かどうか
弁護士は、ひととおりあなたの説明を聞くと、法的にその解雇が正当かどうかを検討します。
その解雇が労働基準法に違反するか、労働組合法に違反するか、雇用機会均等法に違反するか、公益通報者保護法に違反するかなどを検討します。
これらに違反する解雇は正当とはいえません。
■正当な理由に基づく解雇かどうか
さらに弁護士は、その解雇が、「客観的に合理的な理由」があるかどうか、「その解雇が社会通念上相当」といえるかどうかを検討します。
検討の結果、合理的な理由がない、または社会通念上相当とはいえないといえる場合、その解雇は正当とはいえません。
■弁護士はどう対応するか
検討の結果、法律に違反する、あるいは正当な理由がないと判断できるときは、弁護士があなたの代理人として会社に対し、内容証明で解雇の撤回を求めるか、あるいは裁判手続を利用することになります。
3.解雇に関する解決事例
■使いづらいから解雇だと言われたケース
会社をよくするためにどしどし意見を述べて欲しいと日頃から言われていました。そこで、朝のミーティングのときに、意見を述べたところ、後日、社長から、「あなたは使いづらい人だから辞めてほしい」と言われました。
■利用できる裁判手続
このケースの場合、弁護士が代理人として、会社に解雇の撤回を求めても、会社がこれに応ずる可能性はほとんどないと判断しました。そこで、すぐに地位確認訴訟を地法裁判所に提起しました。
ほかに労働審判を申し立てる、あるいは、労働局にあっせんを申請するという方法もありえます。
■提訴への準備
裁判は訴状を裁判所に提出することから始まります。
訴状を作成するためには、つぎの資料が必要となります。
①会社の登記簿
②就業規則・給与規程(賃金規程)、または労働条件通知書
③直近の3か月間の給与明細
④その他資料(解雇辞令、解雇説明書、労働組合加入通知書など)
■裁判の進行
裁判の当事者は、原告であるあなた、被告である会社です。
まず何回かの口頭弁論で、書面(訴状、答弁書、準備書面、書証)のやりとりがあります。これには数か月かかります。
次に、証人尋問、原告尋問、被告尋問があります。そして、裁判官が判決をします。
■認容判決
「使いづらいから解雇だ」と言われたケースは、客観的に合理的な理由がなく社会通念上相当であるとは認められないとして、解雇は無効であるとの判決(認容判決)がなされました。
原告の男性は職場復帰することができました。

ノート

